第3回分子ロボット倫理研究会(2017年11月11日,東工大田町CIC)
投稿日:2017/10/13
第3回分子ロボット倫理研究会(SICE分子ロボティクス調査研究会共催)開催のお知らせ
JST「分子ロボットELSI研究とリアルタイム技術アセスメント研究の共創」キックオフ大会
開催期日 2017年11月11日(土)13:00-17:00
開催場所 東京工業大学(田町キャンパスイノベーションセンター)多目的室4(参加費無料、定員50名)
世話人 小長谷明彦(東工大)
参加費 無料(当日参加も可です。気軽にお越しください。)
関係サイト
・分子ロボティクスWEBサイト
・分子ロボットELSI研究とリアルタイム技術アセスメント研究の共創
・情報技術・分子ロボティクスを対象とした議題共創のためのリアルタイム・テクノロジーアセスメントの構築
・JST「人と情報のエコシステム」公式サイト(HITE)
・インタビュー「開発しながら協議する、生体分子ロボット」
開催趣旨
DNA、リポソーム、微小管、分子モータのような生体分子を用いて「感覚」や「知能」を備えた分子ロボットを創る技術が現実のものになってきました。すでに、アメーバ型ロボットや分子人工筋肉などが動き出しています。このような分子ロボットの応用分野の一つとして、体内で薬のように働く分子ロボットが考えられます。実際に薬のように働く分子ロボットの開発にはまだまだ時間がかかりますが、分子ロボットに関する設計技術やシミュレーション技術は日々着実に進んでいます。
分子ロボット倫理研究会では、分子ロボットが正しく社会に受け入れられるにはどのようにすればよいのか、という観点から、分子ロボットの倫理・法律・社会的課題(ELSI)について議論してゆきます。実用化にはまだまだ時間のかかる未来技術ですが、技術が開発されてからELSIを議論するのではなく、技術の開発とその技術のELSIを同時に議論してゆくことが、分子ロボット技術の正しい発展に不可欠と考えています。
2017年10月1日より、JST「人と情報のエコシステム(HITE)」の研究課題として、「分子ロボットELSI研究とリアルタイム技術アセスメント研究の共創」(小長谷G)と「インターネットを活用して技術・社会双方の幅広い知見・意見を集めるリアルタイム技術アセスメント研究」(標葉G)の2課題が採択されました。本研究会では、この2つのプロジェクトの「共創」の基本コンセプトと今後の進め方について紹介します。また、「分子ロボットが守るべき原則(分子ロボット原則)」について議論を開始します。様々な分野からの意見を募集します。
プログラム
13:00 – 13:40
小長谷明彦(東工大):「分子ロボットELSI研究とリアルタイム技術アセスメント研究の共創」について
分子ロボットのような先端技術に関してはSF的な期待感あるいは恐れから様々な倫理的・法的・社会的影響(Ethical, Legal, and Social Implications、ELSI)の問題が浮上しかねない。このようなELSIの議論の盛り上がりは、論点の多様化と深化をもたらす反面、時として社会の中で議論すべき議題の混乱を招きやすい。これを解決するために、標葉グループが開発するリアルタイム技術アセスメント(RTTA)システムを活用する。RTTAを用いて分子ロボットELSIに関して技術・社会双方の幅広い知見・意見を集めることで、分子ロボットの推進に必要な原則案、基礎研究ガイドライン案、医薬品応用ガイドライン案の策定を図る。
13:40 – 14:20
標葉隆馬(成蹊大学):「メディア分析から見る、分子ロボティクスの語られ方の可能性」
分子ロボティクスは社会の中でどのようなフレーミングで語られる可能性が高いのだろうか。前年度に行ったTwitterデータを対象とした予備的な分析の結果では、ナノロボットやナノテクノロジー分野に引き寄せた形で語られる可能性が見出されている。そのため、分子ロボティクスにおける今後の語られ方について洞察する上で、ナノ分野のこれまでの語られ方の詳細を検討しておくことは有用であると考えられる。
そこで本発表では、日本国内主要新聞におけるナノ分野関連報道分析の結果を報告する。 またナノテクノロジーについては、欧州において話題となっている「責任ある研究・イノベーション(Responsible Research and Innovation: RRI)」の観点からの検討も進められている現状がある。そこで発表の後半では、欧州委員会が公表したCurrent RRI in Nano Landscape Reportをはじめとしたナノテクノロジーに関するRRIの議論内容を共有する。これらの作業を通じて、分子ロボティクスを巡る社会的議題洞察について議論を深めていきたいと考えている。
14:20- 14:50
小野 喜志雄(順天堂大学):「BIOMOD2017参加報告:ELSIの観点から」
学生たちの分子ロボットのいわゆるロボコンであるBIOMODが今年は11月4日〜5日にサンフランシスコで開催される。本講演では、今年の学生の発表をELSIの観点から考察する。学生チームが考える研究課題でのELSI課題としては、1)目的などが明確に示されないままに不必要な動物実験が行われる、2)実験に用いたDNAやRNAが環境中に流出して環境に悪影響を及ぼす、3)DNAやRNAが動物や細菌などのDNAやRNAに取り込まれて新たなる変異を引き起こしてしまう、4)DNAやRNAの作用に影響を与える実験を行なってしまう、などのことが考えられる。
BIOMODにてELSIに関する記述を加えることで、学生たちが自分たちで考えている研究がELSIという観点から見て安全かどうかについて気づくことが極めて大きなポイントであると考える。分子ロボットは意図して倫理的に問題のある研究を実施する研究者は少ないものと想像されるが、偶然の結果として環境に影響を与えるとか、生態系に影響を与えるようなことが起きないとは言えないところに問題がある。したがって、そのようなことに学生自体が気づき、そういう課題への対処方法について考えるという習慣が身につくことにより、自然環境への影響や生態系への配慮などに気をつかうようになることが重要と考えられる。
14:50 – 15:20 休憩
15:20- 16:00
河原直人・塩塚政孝(九州大学・先端融合医療創成センター):分子ロボット技術に関する原理・原則の策定に向けて
今回から、分子ロボット技術に関する倫理綱領の策定に向けて、より具体的な検討を展開していければと考えている。これまでは、議論の素材として、1)従来の生命倫理、技術倫理、専門職としての行動規範に係る倫理的枠組み、2)エマージング・テクノロジー(合成生物学を含む)に関する倫理的枠組み、3)ロボティクスをめぐる倫理的枠組み、4)その他、関連する分野における倫理的枠組み、等を考慮してきた。
上記には、生命倫理の原理・原則はもとより、全米プロフェッショナル・エンジニアリング協会(NSPE)による倫理綱領、米国大統領委員会によるエマージング・テクノロジー評価のための倫理原則、英国工学・物理科学研究会議(EPSRC)によるロボティクス5原則も含まれる。
これらの論点を整理しつつ、分子ロボット技術ならではの倫理綱領の要件を紡ぎ出すことで、現代版のロボット三原則ともいうべき規範確立に向けた端緒を開くことができればと考えている。
16:00 -17:00
意見交換会
(グループに分かれて来場者も交えて「分子ロボット原則」について自由に議論します。意見交換が目的であり、とくに結論は出しません。)
17:30- 懇親会 (参加費4500円、田町駅周辺を予定)