代表あいさつ
分子ロボティクスの技術発展により、リポソームや微小管や分子モーターといった生体分子を用いて実際に動く分子ロボットを創生することが可能となりました。また、筋肉のように収縮する人工筋肉もプロトタイプが作られています。分子ロボットの技術開発がさらに進めば、将来的には人工細胞や人工筋肉だけでなく、電子機械部品と生体分子部品が融合したハイブリッド型分子ロボットの開発も可能となります。生体エネルギーを用いて外部に情報を発信する分子ロボットや、逆に、外部からの情報により生体を制御する分子ロボットも実現可能な技術の範疇に入ってきます。分子ロボット技術がさらに成熟すれば将来的には人間のサイボーグ化も夢ではなくなるかもしれません。
このように、技術面に関しては、分子ロボット構築に必要な知識、材料、方法論が日進月歩で進んでいます。一方、分子ロボットを用いればどのような応用が可能なのか。分子ロボットが発達したら人類にどのような影響を及ぼすのか。社会にどのようなインパクトを与えるのか。技術的イノベーションの観点からはどのような価値があるのか。分子ロボティクスのような境界領域の人材を育てるにはどのような教育をしなくてはいけないのかなど、倫理、法律、経済、教育の観点からは、様々な問題が考えられます。
本プロジェクトでは、このような疑問点に答えるべく、社会技術の観点から、人間社会に受け入れられる分子ロボットにするための課題について調査します。