第396回CBI学会講演会で講演します(6月7日, 東大弥生講堂)

連立微分方程式における未知パラメタ推定法として、速水謙研究室(国立情報学研究所)と共同開発した、クラスターニュートン法に関する研究講演会において、「クラスターニュートンメソッド(CNM)による個体差要因解析を目指して:-イリノテカン全身生理学的薬物動態(WB-PBPK)モデルへのCNM適用の経験から-」と題する講演をします。

胆管腫瘍患者のイリノテカンの薬物動態モデル(Arikuma et al., BMC Bioinformatics, 2008)から制約付きクラスターニュートン法による個別薬物動態の解析(Asami et al. BMC Systems Biology)まで、クラスターニュートン法の開発に関わる話をします。

http://cbi-society.org/home/documents/seminar/2017to20/20180607.html

第396回CBI学会講演会

「薬物動態領域における新しい解析ツール、クラスターニュートン法(CNM);
薬物間相互作用、遺伝子多型のin vivo 解析およびバーチャルクリニカルスタディへの応用」

開催趣旨
Cluster Newton法(CNM)は、東京工業大学小長谷研究室と国立情報学研究所速水研究室において共同で考案された,劣決定逆問題における複数の解候補を求める新たなアプローチである[1]。パラメータ推定に繁用されてきたGauss-Newton法やLevenberg-Marquardt法では、特に未知パラメータが複数の場合、解の初期値の設定によって最終的に得られる近似解が大きく変動したり、初期値の設定によってはしばしば発散し、解候補が得られないこと、また計算速度が遅いことが問題であった。一方、CNMは、初期値を範囲で広く設定することができ、最終的に得られる解も、候補解セットの集合として得ることができるため、初期値依存性が解消される利点を有する。また、計算コストが従来法と比較して極めて低減されている。全身の薬物動態の予測に用いられる生理学的薬物速度論(PBPK)モデルは、極めてモデルパラメータ数が多く、in vitro実験や動物実験からでは決定が困難なパラメータも多いことから、複数の未知パラメータを置かざるを得ない。そういった状況下でCNMはPBPKモデルにおける強力なパラメータ推定ツールとなり得る。本講演会では、CNMの原理とその応用の一つとしてのPBPKモデルに基づく薬物動態解析の実例を複数取り上げ、本方法論のさらなる可能性を探ることを目的とする。

[1] Aoki, Y.; et al.SIAM J. Scientific Computing 201436 (1), B14-B44.